うつ病になってすぐのころ、私はうつ病になった自分と、うつ病になる以前の自分との違いにとても戸惑いました。「私はまったくの別人になってしまったのだろうか…。このまま、私は昔のようには笑って過ごせないんだろうか。」そんな風に思っていたのです。

うつ病になる前の自分に戻りたい

うつ病になると、体の不調や、精神面での辛さ、様々なことに見舞われます。病気になると、誰もが「病気になる前に戻りたい」と思うもの。これはうつ病でも一緒です。

 

――以前のように、元気に動きまわりたい。

――以前のように、外出や趣味を楽しみたい。

――以前のように、社交的に人と関わりたい。

 

うつ病の症状が酷く、寝込んでばかりの時期は頭の中がモヤモヤとした状態で、色々と考えを巡らせることが難しかったので、そんな願望はありませんでした。しかし、回復期に入り少しずつ頭がクリアになってくると、「以前のように戻りたい」という意識が強くなってきたのです。

 

過去の自分はもっと元気だったという思い込み

回復期に入って、少しずつ頭の中がクリアになるにつれて、「以前はこんなはずではなかったのに…今の自分はどうしてこんなにも何もできないんだろう?どうして、こんなに引きこもってばかりなんだろう?」

 

そんなことばかり考えるようになっていました。

 

しかし、あるとき担当医から言われた言葉をきっかけに、私の考えは少しずつ変わります。

いつものように通院し、「起きていられる日が増えましたが、それでも頭痛が酷い日があります。以前のようには戻れないのでしょうか?」と医師に伝えたところ、「健康な人でも、何かしらの不調を抱えていることはあります。いつも100%元気というのは難しいですよね。以前は頭痛に悩まされていなかったですか?」という回答が返ってきました。

 

この回答を聞いて、私は思い出したのです。うつ病になる前の自分も酷い頭痛に悩まされていたことに。

たしかに、うつ病により頭痛以外の症状もあります。でも、いつのまにか私の中で「過去の自分は元気だった」という思い込みが大きくなってしまい、「うつ病ではない自分=元気100%」にすり替わってしまっていたのです。

 

つまり、以前の自分に戻りたいと思いながら、以前の自分以上を求めていたのです。先生が言うとおり、仕事や育児で忙しくしていれば誰でも疲れはたまるし、何かしらの不調を抱えます。心が疲れることもあるでしょう。

 

いつの間にか「うつ病になった自分」を嘆くあまり、うつ病の症状と単なる不調の境目が曖昧になってしまっていました。そう気づいてからの私は「以前の私に戻りたい」とは考えなくなりました。

 

なぜなら、私が考える「以前の私」は単なる幻想にすぎず、本当は「なりたい自分」だったからです。昔はこうだったのに、なぜ今はできないのか…」と思うと絶望感に苛まれますが、「なりたい自分」という理想を追いかけるほうが気持ちの落ち込みが少なくなります。

 

自分の心の弱さに気づいた今

体調の悪さはもちろん、「昔は社交的で元気だった。笑顔が絶えなかった」というのもまた、脚色された私の記憶です。よくよく思い出してみれば、私はいつも人の目を気にしていました。

 

――本当は初めて会う人と話すのは緊張するけど、人見知りだと思われたくないから自分から話しかけないと…

――一人でいたら、寂しい人間だと思われるから、誰かと仲良くしていないと…

――本当は心臓が飛び出そうなほど緊張するけど、できる人間だと思われたいから、このプレゼンは意地でも成功させなきゃ…

 

いつも、心の奥底にモヤモヤを抱えながら「明るい自分」、「強い自分」を装っていたのです。

そういった自分を認めてしまうと、もう頑張れないのではないか?という不安があったような気がします。ただ、これはうつ病になって自分を見つめる時間が増えたことで気づけた事実。当時はそういったモヤモヤがあったとしても、無意識に無かったことにしながら自分は「社交的で明るい」と思い込んでいたんです。

 

だから、うつ病になった当初は「昔のように元気で、明るくて、社交的に戻りたい」と切実に悩んいましたが、「過去のセルフイメージは単なる美化にすぎないんではないか?」と考えてみると、過去の自分だって弱いところはたくさんあったということに気づかされました。

 

――私は弱い。

――頑張り過ぎるのも、自分の弱さを隠すためなんだ。

――私は周囲の人に弱いと思われることに耐えられないほど弱い。

――でも、弱さを隠す努力はもう疲れた。

――頑張り過ぎて自分をイジメるのももうやめたい。

 

そう思えるようになってからは、少しずつ「頑張り過ぎない自分」に近づいています。

 

頑張りすぎない自分は成長している

自分は弱いと認めるのは、負けを認めるようで嫌だという人もいると思います。たしかに、人に弱さを見せないほうが良い場面もありますが、自分自身にも弱さを見せないというのはとても疲れるものです。

私はうつ病になって初めて、「自分は弱くない」と自分に思い込ませることの辛さを思い知りました。本当は心の奥底で「嫌だな」とか「苦手だな」、「自分には無理だな」と感じているのに、「そんな風に思うのはダメだ!もっと強くならなきゃ!頑張らなきゃ!」と気持ちを張り詰めていると心休まるときが無いように思います。

 

周りには弱さを見せないにしても、自分自身は自分の弱さを認めて、その辛さを分かってあげるようにしてあげたい。今ではそう思っています。

 

自分の心を無視して頑張り過ぎるのは、自分を大事にしていないということです。

自分の心の声を聞いて、「頑張りすぎない」という選択をするというのは、自分を大事にしているということ。

 

他人を大切にしたいなら、まずは自分を大切にしましょう」というのはよく耳にする言葉です。自分を大切にして、心に余裕が生まれれば自然と周りの人のことを考える余裕が生まれます。

 

そう考えると、自分の弱さを隠すのに必死になったり、過去の自分と今の自分を比較していた頃の私はなんだか自分のことばかりだったような気がします。今の自分はもしかしたら過去の自分に比べて体力も明るさもないかもしれません。でも、心の余裕ははるかに増えたと思います。

頑張り過ぎていたあの頃の自分より、頑張り過ぎない今の自分のほうが私は好きです。

体力は年をとれば無くなっていきますし、若さもなくなります。辛い出来事があって、思い切り笑えない時期もあります。でもその都度、過去と比べていたらいつまでも幸せな気持ちにはなれません。

 

今の自分を受け入れたうえで、どうありたいかを知る。「ありたい自分の姿」に近づくことができれば、それはものすごい成長ですが、今の自分を受け入れて、どうありたいかというのを知っているという時点で、それもまた成長の一つだと思います。

うつ病になってから「過去の自分になかなか戻れない」と悩んでいる人は、「戻れない」ということではなく、今の自分がどうなったらより幸せなのか「ありたい自分の姿」を考えてみてください。

 

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