うつ病は『心の風邪』に例えられることがよくあります。誰でもなりうる病気ということで風邪に例えられるのでしょうけど、実際にうつ病になって思うのは、そんな生易しいものではないということです。

『心の風邪』という言葉が生む誤解

誰でもなる可能性があるという点では『風邪』の例えはあっていますが、実際にうつ病を経験した人であれば、『風邪』とは全く違うという点に共感いただけることでしょう。

この『心の風邪』という言葉、うつ病についてよく知らない人たちが聞いたら、どのようなイメージを持つでしょう。

 

風邪は、こじらせなければ自然と治っていくことが多い病気ですよね。しかも、風邪が原因で会社を休むとしても最低で1日、多くて3日といったところではないでしょうか?

 

じゃあうつ病も、自然に治るのか?2~3日休めば回復するのか?

答えは『NO』です。

 

うつ病と診断されても、休職せずに働きながら治療しているという人も多くいますが、症状を悪化させないためには早めの治療休養が重要です。

また、症状が良くなったとしても、うつ病になる前と全く同じ状態になるかと言ったらそうではありません

 

つまり、『風邪』という言葉を使うと、あたかも少し休めば元通りになるという誤解を招きかねないということです。

 

体だけでなく社会的ダメージの大きさもある

そして、体への影響だけでなく社会的なダメージの大きさも『風邪』には無い要素です。

うつ病の症状には、悲しい気持ちになったり、やる気がなくなったりという気分的な症状以外にも、めまい・睡眠障害・頭痛・吐き気・食欲低下・疲労感など体への影響もあるのですが、中でも、仕事をしている社会人に致命的なのは『集中力の低下』や『判断力の低下』、『記憶力の低下』といったものです。

 

集中力や記憶力の低下は、簡単なことでミスを招いてしまいますし、簡単な判断(決断)さえできない状態になると、同じことを考え続けて堂々巡りになってしまうことも多くあります。

こういったことが続くと、『自分は仕事ができない』と自分を責めて症状が悪化してしまう負の連鎖に陥り、最終的には出社すらできない状態になることも。

 

出社すら困難=休養するしかない

 

ですよね?風邪なら2~3日の休みなので、「じゃあ、休もう」と割り切ることもできますが、うつ病の場合最低でも1ヶ月は体を休めて様子を見ることになります。自分の仕事に穴をあける、周りに迷惑をかけるなどの葛藤もありますが、一番の不安は収入です。

 

働けない=収入ゼロ

 

これほど不安なことってないですよね。私は結婚して共働きだったので、主人の収入+傷病手当で生活できましたが、それでも生活はとても厳しかったです。これが一人暮らし、既婚男性で奥様が専業主婦のご家庭の場合は更に大変でしょう。

 

復帰できたとしても、再発のリスクは伴いますし、以前と全く同じように働ける保証もありません。一度休職するほどのうつ病を経験した人に大きな仕事は任せにくいですし、休職期間満了で退職を余儀なくされることもあります。

退職後の再就職も、うつ病を抱えていることがネックになって中々決まらない可能性が高いです。

 

経験者から見ると『風邪』より『骨折』に近い

実際にうつ病を経験して思うのは、

――『風邪』というよりも『骨折』に近いのではないか。

ということです。

 

私が骨折のほうがうつ病に近いと思う理由は以下の5点。

  1. だれでもなりうる
  2. 疲労骨折、外傷骨折、複雑骨折、ヒビだけなど種類や度合いの違い
  3. 入院や長期の休養を余儀なくされる場合もある
  4. 職業によっては仕事を辞めざるをえない場合がある
  5. 後遺症が残るケースがある

 

①誰でもなりうる

これはまさにその通りですよね。普段の何気ないこと(くしゃみや小指をタンスにぶつける等)でも骨を折る可能性は潜んでいます。

「私は何をしても骨を折らない!」という人は聞いたことがありません。

 

②種類や度合いの違い

骨折には種類や度合いの違いってありますよね?

それがうつ病の原因や度合いにもちょっと似ているな~と感じるんです。

  • 慢性的なストレスの蓄積でうつ病発症→疲労骨折
  • 急なストレス(昇進、離婚、離別など)によりうつ病発症→外傷骨折(交通事故など)
  • 糖尿病やガンなどの病気、ホルモンの変化によりうつ病発症→病的骨折
  • 軽度のうつ病→ひび
  • 治療に時間がかかるほど重度のうつ病で後遺症のリスクが高い→粉砕骨折
  • 不安障害、摂食障害などを併発するうつ病→複雑骨折(皮膚から飛び出る骨折)

といった感じです。

どうでしょう?なんとなくイメージわきませんか?

 

③入院や長期の休養を余儀なくされる場合もある

骨折の場合、その度合いによっては入院しなければいけないケースや、安静にしていなければいけないケースがありますよね。

うつ病も同じで、自分で何もできないほどに重度の場合は入院する必要がありますし、入院まで至らなくても、仕事を休み安静に過ごさなければいけない人も多くいます。

 

入院や休養の期間が長ければ長いほど、リハビリは必要ですし、それだけ社会から離れているので収入面でのダメージも大きい

出社できるほどになっても、ギプスをつけてたり、松葉づえの人っていますよね?うつ病も、復職できたからって以前のように仕事ができるわけでなく、ある程度の支障はあるし、無理したら悪化させることになります。

 

 

本来、骨折している人に激しい運動させるのなんて言語道断ですが、うつ病の場合は見た目には普通な場合が多く、その判断が難しいところ。これは周囲の人に限らず本人にとってもです。

ある程度症状が治まっていれば「ちょっとくらい頑張れそう」とその時は思ってしまうのですが、それが再発のきっかけになることもあります。無理した時点で痛みを感じないというのが、加減の難しいところと言えますね。

これは再発することの多い疲労骨折と似ている部分があります。

 

④職業によっては仕事を辞めざるをえない場合がある

例えば仕事による負荷が原因で骨折した場合、同じ仕事を続けるのを医者に止められることがあります。また、骨折による後遺症のせいで以前のように動くことができず、同じ仕事を続けるのが難しいというケースもありますよね。

特にスポーツ選手にとって、骨折はかなり致命的です。

 

うつ病でも同じことが言えます。

会社の人間関係や、仕事の重圧などが原因の場合、うつ病の症状が改善したとしても、同じ職場にい続ける限り再発のリスクは高いですし、「考えがまとまらない」、「決断ができない」というのは多くのビジネスマンにとって大きな影響をもたらします。

 

うつ病だから残業のや仕事の負担を軽くしてくれるという職場ならいいですが、まだまだ対応できていない企業は多いものです。結局、復職したはいいけれど再発してしまって退職転職という話はよく聞きますよね。

 

⑤後遺症が残るケースがある

骨折の場合、後遺症が残るケースがあります。風邪の場合、運が悪いと蓄膿症や肺炎になることもありますが、大抵はすんなり治りますよね。

骨折だと、違和感や痛みが残ったり、治った後も悩まされる人もいます。

 

うつ病も症状が改善されたからといって安心できるものではなく、つねに再発のリスクや発症前のようにできないもどかしさがあります。

 

うつ病を『心の風邪』と考えるのはやめよう

うつ病自体、「完治」ではなく「完解」という言葉が使われます。これは、「症状がよくなっても治ったわけでなく、気を付けないと再発する恐れがあるよ」という意味。

骨折の場合は「完治」ですが、やはり骨折した場所というのは、治ったと言われた後も多少気になりますよね?

しばらくは骨折した場所に負担を掛けないようにしよう。と思う人も多いはず。

これが風邪だと、そこまでは考えません。

 

だからこそうつ病を風邪に例えてほしくないのです。

うつ病は、症状が良くなったとはいっても以前の状態に戻ったわけではありません。骨折したときと同じように、負担を掛けすぎないように注意する必要があるということ。

 

周囲の人はもちろん、うつ病になった本人も『風邪』のように単純ではなく、経過の観察が大事だということを覚えておきましょう。

そして、なるべく職場の人や家族に説明するときは『心の風邪』という言葉を使わないようにすることをおすすめします。

 

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