出産のリアルな大変さを描いていることで定評のあるドラマ『コウノドリ』ですが、その続編である『コウノドリ2』では出産だけでなく産後の大変さも描かれており、育児中のママたちから多くの共感の声が上がっています。

※注)この記事にはドラマ『コウノドリ2』第3話のネタバレが含まれます。

産後うつは誰でもなりうる病気

産後うつマタニティブルーという言葉は、妊娠中からよく耳にしますが、まさか自分が産後うつになると思っている人はかなり少ないのではないでしょうか?

私の場合、産後はマタニティーブルー程度で済んだものの、その後復職して頑張りすぎたことをきっかけに本格的にうつ病を発症したわけなのですが、最初は長期間続く不調がうつ病によるものだとは思いもよりませんでした。

 

きっとうつ病になった人のほとんどが「自分がうつ病になる」と思ったことは無いなのではないでしょうか。

 

産後うつも同じで、そういった病気があるとは知りつつも、自分がなる可能性があると認識している人はごくわずかです。そのせいか、産後に起こる体の不調や精神的な落ち込みが病気ではなく、あたかも「自分のせい」だと感じる女性が多くいます。

 

産後うつホルモンバランスの乱れも大きく関係しているため、育児にも慣れ、ホルモンバランスが落ち着いてくるころに自然と症状がなくなることが多く、自分が「産後うつ」だと認識せずに過ごしている人も多いことでしょう。

 

育児中のママが共感する産後のリアル

ドラマ『コウノドリ2』では出産だけでなく、産んだ後の大変さにも焦点を当てています。ドラマのなかでは複数の妊婦さんの話が並行して描かれるので、一人ひとりのストーリーは時間にするととても短いものです。それでも、これほど話題になるのは、その大変さや抱えている悩みを的確に表現しているからでしょう。

 

特に、第1話で心臓に疾患のある赤ちゃんを産んだ高橋メアリージュン演じる佐野彩加が次第に追い詰められていく様は、障害なく健康に生まれた赤ちゃんを育てるママたちにも共通するものがあります。

 

ママたちが共感する彩加のストーリー
  1. プロジェクトの途中で産休に入る彩加に対する後輩の冷たい態度
  2. 産前に赤ちゃんに心疾患が発覚し、すぐに復職ができないという不安
  3. 夫の「俺も手伝うから」という当事者意識に欠けた言葉
  4. 退院時に彩加が発した「明日からこの子と人きりというのが怖い」という言葉
  5. 洗濯物や育児用品であふれかえるリビングがリアル
  6. 夫が「みーちゃん(赤ちゃん)泣いてるよ?オムツじゃない?」というものの、自分からは何もしない
  7. 夫の「お前、子供産んでから変わったよな」発言
  8. 夫の「俺、会社ではイクメンって言われてる」発言
  9. 実母の「部屋くらい片づけなさい。ほんと、できない娘でごめんなさいね。仕事復帰よりも赤ちゃんと一緒にいるほうが大事よ。三つ子の魂百までっていうでしょ。この子の心疾患だってあなたが妊娠中に仕事ばかりしてたから・・・」と、矢継ぎ早に繰り出される非難。
  10. 職場では別の人がプロジェクトリーダーに就任し自分の仕事がなくなった絶望感
  11. 泣き止まない赤ちゃんを呆然と見つめ「なんで泣いてるの?私が泣きたいよ」と言ってしまいたくなる気持ち

などなど、このようなシーンに共感する人が多く、SNSではたくさんのママたちが過去の辛かった記憶を思い出したり、今現在の辛さに重なったりと、多くの反響が寄せられています。

 

マタハラという言葉がありますが、そこまでいかなくても、ドラマのシーンのように産休・育休に入る前の引継ぎの大変さ周りに迷惑をかけてしまうという罪悪感は、働く女性に共通する悩みです。また、長期間休むというのは、罪悪感だけではなく、果たして無事に復帰できるのだろうか?」「キャリアに影響しないだろうか?」「育児と仕事とを両立できるだろうか?」という不安もたくさん生み出します。

 

この悩みを聞き、彩加の母のように「自分の仕事よりも子どもの心配をしたらどうなの?」と言う人もいるでしょう。でも、子どもの親は母親だけではありません。父親も親なのです。母親だから仕事は諦めなければいけないという風潮は未だに多く、周囲だけでなくママたち自身も不満を感じつつその状況を受け入れているのが現実。我が家でもそうでしたが、一緒に子どもを育てるはずの夫から発せられる「手伝う」という言葉に、何度となく疑問を覚えました。

 

産後、乳幼児とともに退院するとき、私は不安で仕方ありませんでした。何が不安かと聞かれると、明確には答えづらいのですが、小さな命が自分の手にかかっているというのは、妊娠中に想像していた以上に大きなプレッシャーとなってのしかかります。ましてやドラマに出てくる彩加の子どもは心疾患を抱えています。「何か起きたらどうしたらいいの?」「異変に私が気づけなかったら?」など、通常よりも不安は大きいでしょう。

 

ドラマで彩加が実母に言われた「あなたが妊娠中に無理をしたから、障害をもった子どもが生まれた」という一言はとてつもなく心を打ちのめします。生まれた子どもに何かあったとき、母親はつい「自分に原因があるのではないか?」と考えてしまいます。それは、コウノドリ1で登場した口唇口蓋裂無脳症の子どもを持った母親もまた同様で、自分に原因があるのではないか?と自分自身を責めていました。

口にはしなくても、母親は心の中でそういう想いを抱えているものです。それを、実母からはっきりと言われた衝撃はいかばかりか。ドラマの中ではさらに、仕事でプロジェクトリーダーの立場を失ったことで、彩加は「自分は誰にも必要とされていない」とまで思い詰めてしまいます。

 

1つ1つをとったら、些細なことだろうと受け流す人もいるでしょう。

でも、こういった1つ1つの積み重ねが子どもを育てる母親を不安にし、孤独にし、追い詰めていくのです。

 

自覚がない・自信がない・相談できないの3拍子

産後はホルモンバランスが乱れることで、うつ状態になりやすいと言われますが、そもそも出産により生活はガラリと変わります。責任を負うべき人間が一人増えるのです。しかも、自分では何もできないから、その命は育てる親にかかっています。

 

自分だけでなく、終始子どものことを気にしなければいけない。夜もまとまった睡眠がとれない。さらには、周囲から「母親とはこうあるべき」「育児とはこうあるべき」という色々な考えを押し付けられることもあります。

 

何もかもが出産前とはガラリと変化し、出産の疲れや、睡眠不足、ホルモンバランスの変化が重なれば、体調を崩したり、精神的に追い詰められたリということが起こるのは不思議なことではないのです。ここで産後うつの症状が出たとしても、育児が未経験の母たちは「育児とはこういうものだ」と思ってしまうのではないでしょうか?

出産前とは明らかに状況が違うので、自分の身に起きている異変も自覚しづらいのです。

 

また、産後うつは考え方にも影響を及ぼします。楽しみは感じにくく、悪い方向にばかり思考が向くのです。

産後うつが原因で赤ちゃんが可愛く思えないのに、「赤ちゃんを可愛いと思えない自分はダメな母親だ」と思ってしまう。産後うつで無気力になり家事もままならないと、「自分はだめな妻だ」と思ってしまう。外出が億劫になり子どもの検診に行っていない、子育てサロンにも行っていないことで自分を責めてしまう

このままではいけないとは思うのに、どうにもできない。自分を責めて責めて、自信が無くなっていきます。

私も、泣き止まない我が子を呆然と見つめながら「なぜこんなに泣くのか。この子は私を困らせたいのか。」と思い悩んだ時期がありました。

 

それなら誰かに相談したらいいのではないか?という声もあるでしょう。でも、そんなに簡単なものではありません。ドラマ『コウノドリ2』でも描かれていますが、うつの症状が酷くなるにつれ、誰かに心配されること自体が「あなたは育児がちゃんとできていないんじゃない?」と言われているように思え、つい「大丈夫です」と答えてしまうのです。

ただでさえ、自分でもできていないことを自覚しているのに、さらに他人にまで責められたら、心が崩壊しそうな状態ともいえるでしょう。ある種の自己防衛です。ドラマのように頻繁に保健師さんが急に訪問してきたら、「自分に至らないところがあるからなのではないか?」と疑心暗鬼になります。

 

産後うつに限らず、他の人には自分の悪い面・できない面・弱い面を見せないようにしている人は多いのではないでしょうか?高橋メアリージュン演じる彩加も、普段は部屋の掃除に手が回らないほど疲れ切っていますが、職場の後輩が遊びに来るときにはキレイに片づけておもてなしをしています。病院で呆然と歩いていた彼女に助産師が話しかけ、「何か困ったがない?」と聞いたとたん、それまで焦点が合わなかった目がはっきりと相手の顔をとらえ、笑顔を作ります。「なんだか私、心配されているんですね。でも大丈夫です。」と答える彼女。

 

心配されている=自分に問題がある

 

そう思って、平静を装っているのでしょう。その気持ちは痛いほどよく分かります。しっかりしなければ…と思えば思うほど、人に相談するのが難しくなるのです。

 

誰かが気づき、手を差し伸べることの大切さ

コウノドリ2の第3話では、追い詰められた彩加が自分の命を断とうとしてしまいます。

駆け付けた四宮先生がかけたのは

俺にあなたの気持ちはわからない。だから今あなたを引き留めているのは、俺のわがままです。まだ治療の道がある患者を放っておくことはできない。何もしゃべらなくていいから、少しだけ話をきいてください。

 

という言葉。そして差し伸べられた手。

 

このシーンに心を救われた人は多いのではないでしょうか。

 

――我が子を可愛いと思えない。

――他の人の力を借りずに自分だけで頑張らなきゃいけない。

――周囲にダメな母親だと思われたくない。

 

そんな風に思いながら、長いトンネルにいるような気分のまま育児をしている人、もしくはしていた人は多いはず。でも、このドラマにこれだけ共感するママの多さからも、世の中のママたちが同じようなことで悩んだり、辛さを感じたりしていることがよく分かります。悩んでいるのはあなただけではないのです。

ドラマで描かれるように、一番近くにいるはずの夫は意外と妻の異変には気づかないことが多いように感じます。むしろ、「出産してからは子どもにかまいきりだし、イライラしてるし、なんだか変わってしまったな…」と自分に冷たい妻に悲観していることも。でもどうか、その変わってしまった原因は余裕のなさの表れだと、世の中の旦那さんたちに知ってもらいたい。夫に気を回す余裕がないほど育児に必死なのです。

 

ドラマでは、病院の関係者が気づくことで、彩加の自殺は未然に防ぐことはできましたが、現実ではなかなかそうもいきません。病院の人が気づいてくれるというのは稀なことです。

 

だからこそ、身近な人が出産後、なんだか様子がおかしいなと思ったら声をかけてあげる、手を差し伸べてあげる、そういったことが大切。そして、産後うつになってからでは本人も自覚しにくく、夫も産後うつの知識がなければ気づくのが難しいため、出産前から夫婦で考え、一つのリスクとして認識することも大事です。

産後うつは誰でもなりうる病気。ドラマ『コウノドリ2』はそのことをしっかりと描いているので、これから妊娠、出産を控えているご夫婦にも見てほしい作品です。

 

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